4.そもそもバレンタインとはバレ・ン・タイン伯爵が起こした革命が起源であり…(以下延々)


「始め!!」

先生の合図とともに、生徒達は壊れたジャンクの後ろに隠れ、狙撃に備える。
この対抗戦は、物陰から撃ち合う銃撃戦を想定して、行っている。
なので、丁度隠れるのに都合がいいジャンクが点在しているのだった。
開始して秒経ったか経ってないかで、早くも、撃たれた脱落者が数名でた。脱落者は、地面に倒れて動かない事が原則であるから、彼らは動かない。

それはつまり、死体のフリをしておけって事でして。
熊に出会った時の対策としてしているのではありません。
この対抗戦は、生き残りが数名になった時点で、チーム戦から、個人戦に変わり、生き残ったものが勝ちというバトルロワイヤル形式になる。
コレ、倒れない限り、先生が止めに入らないから痛いんだな。
なんだかんだしながらも、雷太は撃たれずに生き残っている。ただし、弾を無駄撃ちしながら。環境にあまり宜しくない戦い方だね。
ヨーコは当然のごとく生き残り、敵の生徒たちを、それこそ鎌で雑草を刈っていくかのように撃ち倒しており、桜もそこそこの戦績を上げながら、生き残っている。

分単位で時間が過ぎれば、立っている生徒の数も随分と絞られてくる。
雷太、桜、は何とか生き残っている状態、ヨーコはもはや○ルトラマンが来ても、必殺技を出す前にやられそうな勢いで、快進撃を続けているし、彼らの他に生き残っているのは、敵味方含めて三人の男子と一人の女子。
その他は、熊に出会ったときの対処法を訓練中のポーズ。(本当はやっちゃいけないそうです)
たまに、生き残っている猛者に踏まれて、ぐぇ、と潰れたヒキガエルの声を、演出してくれたりする者も中にいる。
ヨーコの銃が軽快な音を上げたとき、残っていた三人の男子のうちの一人が、熊に襲われた時の訓練へ移行した。
そして、先生のイヤーな宣言がチーム戦の終わりを告げた。

「じゃあ、個人戦に突入な。終わったら言いにこいよ。」

ガーーーーーーーーーン!!
ああ、雷太さんにヨーコさんの殺人的というか、獣が、「一番食べたくて仕方がなかった獲物をやっとこ食えるぜベイベー!!」な視線が、つんつん頭に飛んできた。おーまいがーーー!!!!
先生のスーパーリッチなお説教は終わった音野が、クロさんと暢気に遊んでる姿が恨めしい。 もしやコイツ、銃撃戦に加わるのが嫌だから、わざと先生のお説教喰らうために先生に当てたのかも、という疑惑が今ふと頭に浮かんだ。
そうなら、雷太もそうしておけばよかったと後悔。
そうすりゃ、ヨーコに脳天に弾をぶち込まれて、時間と大量のワックスを割いてセットしている頭がぐしゃぐしゃになる事態が避けられたのにぃ。
そうこうしているうちに、桜ちゃんが撃たれ、熊に襲われ訓練へ。
これ、どっちかって言うと、熊に襲われた後って言った方がいいかもね。撃たれたわけだし。
残っていた男子一人、女子一人も熊に襲われ(ヨーコって言う熊さんにね。)リタイア。
よく頑張った!偉い!なんて考えてる間に、雷太とヨーコの他に一人だけ生き残っていた男子も、熊さん(ヨーコって言うメス熊)に襲われ…ちーん。 この熊さん、きっと童話を読んだことがないんだよ、きっと。
で、そんなことを考えている間に、熊さんは次の獲物をターゲットロックオン!してたわけで。

「雷太ー?生きてる?死んでる?」

どこか楽しげな音野の声だった。彼の頭の上で、クロさんが優雅に毛づくろいをしている。ええなぁ。
ゆっくりと瞼を開けると、そこは見慣れた寮の自室だった。ついでにベットの上。
あっ、クロさんのフンを発見。
うーん、こんなところでするなんて、しつけちゃんとしろよ音野。
丹念込めてセットした頭に弾丸が刺さったその瞬間、ショックで意識が飛んでしまった。
頭がぼさぼさになる事が、気絶するぐらい耐えられなかった雷太だった。
しかし、その心配に反してハードワックスでがちがちに塗り固めてあった彼のヘアスタイルは一切乱れていなかった。

「あっ、生きてたんだね、やっぱり。」

と、暢気に喋る音野に、少しムカっと来たが、とりあえず今の状況を説明してもらうことにする。

「オレが橋本に撃たれてから何かあったか?」

と、聞くと音野は、裏がなかったら犯罪レベルの笑みをにこっと浮かべて、こういった。

「ふふっ、実はね、君が橋本氏に撃たれて倒れた後、彼女はこういったのだよ。『アア、雷太クン!!何で倒れてるノ!?誰よ、こんなことしたのハーーー!!!』」

アンタです。紛れもなく。
地球が20451874618278954634981632589…(以下省略)回、回ったときにあなたはそれを実行しました。
誰が回数数えたか知らないけど。

『は!!私の手の中に銃が…もしかして私が撃ったの!?嘘よ!!きっと桜が撃ったのよ!!』って言ってたよ、橋本氏。」

と、音野はにこにこしながら、怪しい口調で喋った。

「…嘘だろ…。」

雷太は顔を引きつらせながら、呟いた。 音野は悪戯好きで、情報部であることをいいことに、嘘か本当か分からない情報を吹き込むことが少なくない。
しかも、その真偽がつきにくい。(お金を払わない時は、ガセが混じっている事が多い。)
でも、これは…誰でも分かると思いますヨ?

「ええ〜、本当だよ。」

と、にこにこ笑顔を浮かべながら断った上で、音野はやはり怪しい口調で続けた。

『桜!!アナタなンてことヲ!!いくら雷太君がツンツン頭だからって、近くのスーパーのワックス全部買い占めてるからって…こんなこと…。』

※本当に、雷太がワックスの買占めをしているかは定かではない。

『つんつんでも…つんつんでも…ワックスの買占めしてても…ワックスの買占めしてても…。』

そこで、音野はハッとした表情でこう続けた。完璧になりきってます。
それを雷太は真剣な顔で聞いていた。おいおいおいおい、雷太ちゃん大丈夫?
弾が当たって頭がおかしくなったのか?ヘアスタイルは大丈夫だったけど。

『はっ、桜も倒れていル!!…ってことは誰か他にいるの?!皆の敵討ちよ!!』

皆死んでないっすよ、ヨーコさん。
付け加えるなら、皆さんとあるメス熊に撃たれて倒れたんですヨ。
んで、音野の口調は、更に温度を上げて白熱しまくりヒートアップだエクスプロードだぜげっへっへっ!!!(意味不明)

「そして、そこに現れたのは!?」

あっ、この後次回を待てとか続きそう。

「次回、富豪刑事が学校にやって来ちゃう!?の巻!!お楽しみ!!」
「何のドラマだよ!!」

すぱこーん、と雷太のデラックス頭突きツッコミ…ではなく普通の手のツッコミが入った。
あ、どうやら雷太さん最初から嘘って分かってて、それでどうなるのかわざと聞いてみたみたいだ。なんだつまらん。
しかし、何故富豪刑事が来るのかいまいち分かりませんな。
この回が放映されたら、ちょっと見てみたい…やっぱゴージャスなのかなぁ?

「お前は本当にちっちゃい頃から嘘ばっかりで、全然いまも直らないな。」

実は、明かすのが遅いですが、この二人ちっさいころからの幼馴染なんですわ。
よく聞く設定だといえばそれで終わりなんだけど。
なもんで、お互いのおばちゃん(寮から離れた町に住んでいます)に会ったりなんかすると、「あら雷太君髪の毛また一段と凄くなったわねぇ。」とか「連斗君(音野の名前)、今日野菜が一番野菜が安いスーパー教えてくれない?」とか言われる。
何だか、二人の幼い頃の姿が容易に想像出来ちゃうのは、気のせいだろうか?
それはともかく、音野は今度こそ真面目に、あったことを話してくれた。
ヘアスタイルは無事だったが、頭にちっちゃいタンコブが出来て、保健室に連行されて冷やした後、この寮の部屋にぶち込まれたとのこと。(校内ゲートボール大会の玉代わりに使われた後に。)
スマートに要約すると、何もなかったというわけだ、うんうん。
尚、ゲートボール大会は激戦の末(玉が使いにくい、という理由で何人も脱落者が出ました。)、銅クラス担任の藤沢五右衛門先生(25歳)が優勝したらしいです。優勝商品は育毛剤三年分で、藤沢先生は「これを親父に送って、親孝行します。」と言ったそうです。いい話ですね。
ん?話はこれっぽっちも脱線してませんが、何か?