しかし、脇役風ぜ…ごほごほ、雷太は無言だった。じぃっと少女の半べそ姿を見てるだけだった。
そして、彼はすたすたと校舎に入っていった。
無数の色々な痛い視線(うっわー、女の子泣かしたよあいつ、とか、俺らのアイドルを泣かせやがって、このつんつん頭ぁ!!土下座して謝れこの野郎!!!とか、んーなにがあったの?僕ちゃん良くわかんなーい、とかその他諸々。尚、教育上宜しくない過激なものはカットさせていただきました。)に晒されながら、彼は震えていた。
(あいつのチョコは…この世のものじゃない…。)
思い出すのに、寿命が6.5光年は縮まる(注:良い子は年月を表す時に光年を使っていけません。)去年のバレンタインデーを思い出して、体に震えが来るのを抑えられなかった。
去年、同じクラスで、全校の男子の注目を集める少女が二人いた。
その少女たちの名は、橋本ヨーコ、樹下桜。
先ほどの少女は橋本ヨーコ。きりりとした勝気な少女で、別名女王とか呼ばれてるとか何とか。
対して、樹下桜は大人しく、おどおどした少女で、守ってあげたい指数100パーセント越えという、ヨーコとは正反対の少女だった。
雷太は、自分は髪の毛以外は目立たないやつだと思っていた。(事実そうです)
なので、自分にはバレンタインデーなんて関係ないと思っていたので、周りのクラスメイトが、チョコを持ってきて先生に怒られる場面がよく見られるだけのちょっとうるさい日としか認識していなかった。(あー、またやっとるわーこりねぇなぁー)
ところが、突然去年も今年と同じように、突然登校してきた雷太に向かって、頬を赤らめながら、ヨーコがチョコを渡してきたのだった。
まぁ、そこで雷太は断る理由も見つからないし、本日のおやつにでもしようとありがたく頂戴しておいた。(チロル○ョコでもタダでは買えないんだよ)
向こうがどんな気持ちで、また、どんな意味を持ってチョコをくれたかなど深く考えずに、ただ男子に義理チョコを配って歩いているのだろうと勝手に納得して。(女子ってそういうところあるじゃん)
そして、学校を終え、寮で(この学校から少しはなれたところに寮があるのだ)、丁寧に梱包された箱を開いたら…。
包みの中には、チョコというよりは明らかに、水を大量に含んでどろどろな泥に近い物体が、「俺がこの箱の中の主だ、文句あんのか。」と言わんばかりに納められていた。
いや、物凄く文句言いいたいんですけど。
そう泥にも言えず(言ってどーするよ)、その物体の前で立ち尽くすだけだった。
そして、数秒後、彼に真の悲劇が襲い掛かってきた!!
彼はヨーコの作ったチョコを、まぁ女の子…いやいや人間が作ったものだし、食べても食中毒起こしたりはしないだろうと舐めて掛かったのだった。(死なないよー多分)
しかし、そんな浅はかな考えが命取りだった。
恐る恐るスプーンですくって、箱の中に鎮座している泥にしか見えないチョコらしい物(液体)を食べる…っていうより、飲んでみたら。
バターーーン!!
3時間後。
「あれ、雷太どうしたのこんな静かで…って、おわっ、何か踏んだ!!ん?これ雷太じゃん!!雷太、起きないと顔に落書きして学校のさらし者にしちゃうよ?ねぇ雷太?返事がない?むー…雷太はそんなにさらし者にされたいんだね、分かった!!じゃあ、お望みどおりに!!
……………あれ、でも何で雷太こんなところに倒れてるんだっけ?まぁいいか。」
それからと言うもの、ヨーコは雷太が自分の気持ちに気が付いたと思い(込み?)、一緒に行動するようになった。
しかし、雷太は学校を一週間休ませた少女に脅えていたのだった。
世界平和を邪魔する兵器を作れる女を脅えない理由がない、と。
また、あんな琵琶湖のそこに何年も沈ませておいた熟成泥のような物体を渡されやしないかと、戦々恐々とこの一年学校に通ったものである。
そして、その恐怖は淡い期待を裏切って、今年もやってきてしまったのだった。
ヨーコのチョコ??の攻略本が売られていたのならば、今月のお小遣いの2500円以内のお値段なら、愛読書の月刊少年○ャンプを我慢してでも買いたいぐらいだった。
あ、でもHUN○ER×○UNTERの連載再開されてたら、多分買っちゃうだろーなー…。