BSDW


とあるところのクリスマスパーティ


今日は十二月二十四日、クリスマス。
…本来はキリストの誕生日であって、多くの日本人にはずぇんずぇん関係ない日だって?
はん、神社も寺も教会も日本人の手に掛れば、どれも一緒なのだ!

というわけで、東日本のどっかにあるとある学校の一室にてクリスマスパーティが行われていましたとさ。

「ごちそうさま〜、リカちゃん、ケーキ美味しかったよ〜ありがとー☆」
「ほんまありがとーなー、リカちゃんいてくれて助かったわ〜。」

髪の毛ピンクという見事な校則違反者夢宮ユミちゃんと怪しい関西弁で喋る岡前ユウちゃんが、無邪気な笑顔を私に向けます。
ちなみにユミちゃんは口の端っこにケーキの欠片がくっついていましたが、本人全く気にしていません。つーか気付いていません。
ユウちゃんも未だフォークを離す気配がありません。まだ食べたいみたいです。

「我が家の専属シェフにも勝るお味でしたわ。」
「ええ、三谷さんのケーキならお店が開けると思いますよ。」

常に背後にボディーガードが付いて回るほどのお嬢様の譲野ヒメカさん、私のクラスの委員長の末未ミカちゃんが、左記の二人とは対照的な落ち着いた微笑を見せます。
譲野さんは後ろのボディーガードの人から受け取ったナプキンで口元を上品に拭い、末未さんはさっきまで口にしていた紅茶のカップを音を立てずにそっと受け皿に戻します。
ああ、本当に上の二人と同じ学年なのでしょうか。

「ありがとう、皆に美味しいって言ってもらって作った甲斐があるわ。」

私――三谷リカが四人に、にっこり笑顔を作ってそう言いました。

今日、クリスマスにこんなパーティに参加する羽目になったのは、それは昨日の今年最後の家庭科の授業のせいでありました。
あ、祝日だけど学校はありました、残念ながら。
昨日の家庭科の授業は調理実習でした。
特にコレを作れという指定は無く、皆思い思いに好きなものを作っていました。
それで私は、明日のために――まぁ今日のことなんですが、一緒に過ごそうと思っていた泰知のためにカップケーキを作っていました。
本当ならもっと手の込んだものを作りたかったのですが、授業だからそんなに時間はなかったので短時間で出来るものを選んだのです。
…のですが。

「へぇーリカちゃんってお料理上手なんだね〜」
「ほんまやなー、うちには絶対真似できへんわ。」
「ですわね。ああ素晴らしい匂い…麗しの我が家の厨房の匂いと同じだわ…懐かしい。」

同じ班のとある三人組が材料を手元で無駄にしながら、揃って私の手元を見つめていました。
そんなに上手いわけじゃないよ〜と私は普通に応じたのですが、そこで、何か閃いたどこかのお坊さんみたいに、後ろにボディーガードを従えた人がポンと手を叩きます。

「そうですわ!明日のクリスマスケーキを作っていただけませんこと!?」
「「おお、いいねぇ!!」」

……期待に満ちた彼女らの眼差しから逃げられませんでした。

私のクリスマス、ばいばい…。

ちなみにそのカップケーキも全部食われました…。



「ん、じゃあ、そろそろあれやろっか〜」

ユミちゃんが皆で京都本社の某会社の有名なパーティゲームをやっている最中に、突然そんなことを言い出しました。
あの、私の緑の恐竜君のターンなんですが…そんなこと気にしちゃいないようです。

「おっけー、皆準備はええかー!?」

ユミちゃんの言葉に応じてユウちゃんもLの文字が入ったコントローラーをほっぽり出して、テーブルの上に投げ出されていた巾着袋を取ってきます。あなたもですか。

「まぁ、あれをやりますのね、私ずっと楽しみにしてましたのよ」

譲野さんが、自分で使っている桃姫みたいに目をきらきらさせながら言います。おお、私はガン無視ですか。
全くもって、ゴーイングマイウェイな人達です。
周囲の視線何それ美味しいの?って感じつーか…不味いって事を覚えてくださいな。

「あれって…プレゼント交換ですよね?」
「勿論そうだよー☆」

人数が多くてゲームに参加していなかったミカちゃんにユミちゃんが答えます。

「さぁて、皆何もってきたんかなーめっちゃ楽しみやわ〜。」
「うふふ、私とても奮発しましたのよ。今日のために随分と頭を悩ませた物ですわ。」
「ユミもね〜今日のために凄〜くがんばったよ!楽しみにしててね〜。」

ゴーイングマイウェイ三人組が楽しそうにプレゼントについて話しています。
彼女たちが頑張ったプレゼントってどんなのだろう、そんな風に言われると私もとても気になります。
けれどその屈託のない笑顔の後ろにミカちゃんのなんともいえない、複雑な表情がありました。

「…はぁ。」

あ、溜息ついた。
何か…これから起こる事への諦めのよーな感情を抱いた溜息でした。



ミカちゃん以外はウキウキワクワクとくじを引いて、皆で輪になって座ります。

「全員くじ引きましたわね?じゃあ、一番のくじ引いた人挙手!」

譲野さんの声に、あ、うちやうちやーとユウちゃんが元気良く手を上げます。
その返事に譲野さんの背後の黒ずくめの人がついたてに遮られた部屋の隅っこから、一番と書かれたメモ用紙が貼られた両手を合わせたぐらいのサイズのラッピングの袋を持ってきます。
あ、見覚えがある。

「わぁこれ誰の?おいしそうな匂いがするわー♪」

ユウちゃんが早く中を見たくてウズウズしながら言います。
ああ女の子が涎なんか垂らしちゃダメだよ…。

「わ、私のだよ。」

慌てて私が返事をします。は、早く涎を拭いてください!
返事を聞いて、ホントに瞬きみたいな時間でユウちゃんは袋を開封して、何の迷いもなく頭ごと袋に突っ込んでいました…そこまでしなくても。

「クッキーやーーー!!!めっちゃおいしそーーー!!!」

袋の中で絶叫が。おかげで声が篭って聞こえます。

「え、えとね、その突然で買い物に行く暇がなかったから…ケーキと一緒に作ったの。ご、ごめんね、甘い物続きで…。」

袋に頭を突っ込んだ怪人にもう驚けばいいのか呆れればいいのか良く分かりませんが、とりあえず動揺しながらクッキーにした理由を口にします。
と、怪人がブンブンともの凄い勢いで頭を振ります。
勿論、袋に突っ込んだまま。

「ありがとーーーもうめっちゃ大事に食べる、死ぬまで大事に食べるわーーー!!!」

いや、腐るから早く食べてよ!
…とツッコミたかったけれど、もはや…クッキーの袋に頭を突っ込んで絶叫する怪人に、私にはぎこちない笑みを顔面に貼り付けるのが精一杯でございました…ああ、この状況を朗らかに笑うユミちゃんと譲野さんが羨ましい…。

ちなみにミカちゃんは私と同じ表情でした。



「あら、二番は私ですわ。」

譲野さんが二番と書かれたメモ用紙を掲げます。
やっぱり黒ずくめさんがついたての後ろに消え、二番の紙が貼られた袋を抱えて譲野さんの前にでんと置きます。
袋の大きさは引越しのダンボールサイズ。こんな大きなものを誰が持ってきたのか、何が入っているのやら。

「あ、うちのやうちの。」

やっとクッキーの袋から出て来て髪の毛がクッキーの粉だらけのユウちゃんが元気に挙手します。

「随分と大きいね。ユウちゃん、何入ってるの?」
「きしし。開けてみてのお楽しみや。」

ユウちゃんが私に怪しく笑います……一体何を入れたんだ、袋怪人。
その間に譲野さんが大きな袋からプレゼントを次々と取り出します。

「ポスターとポスターと人形とポスターと…カード…とカレンダー?」

譲野さんの隣には、丸められたポスター三つ、包装に入ったままのカードの袋、箱に入った人形(何の人形かはまだ良く分からない)、ポスターと同様に丸め込まれたカレンダー…で出来た山がございました。 嬢野さんはそれらを一つ一つ出しては広げ、出しては広げ…と山を一つ一つ広げていきます。
するとそこには――キャッチャーミットを構える人、バットを振ってる外国人のおっちゃんのでーっかいポスターとか…テレビで見たことあるやたら顔が大きな首がかくかく動くあの人形とか…野球オンパレードグッズが広がっていました。

…えと…これは…クリスマスプレゼント?…女の子の?

「そのポスターは阿部、そっちのはラミレス、それはイ・スンヨプ、あ、フィギュアは松井の首が動くやつな、カレンダーは坂本の。」

ユウちゃんが早口で説明を付け加えます。
…だ、誰それ?私野球なんて見ないから…松井ぐらいしかまともに知りません。
嬢野さんもユミちゃんもユウちゃんの選手名の羅列にはついていけないようで、よくわかんない顔をしています。
二人とも野球の授業の時、三十人ぐらいでやるものだと思っていたらしいです……それだと打席が回ってくるのは一体いつの話でしょうね…。
で、ミカちゃんはあちゃー、また始まったよ、みたいな顔をしています。
ユウちゃんの趣味を知っていたんでしょうか。

「そっちのカードも開けてみ?」

言われて、もらったけど話についていけなかった嬢野さんがべりべりとカードの包装を剥き始めます…切り口破るのに失敗してはさみを取り出してちょきちょき切って、封を開けます。五枚入りらしい。
あ、なんかそのうちの二枚キラキラしてる。
でも、写真はモノクロ。アンバランスなカードです。
ユウちゃんがそれを見た途端、息を呑みました。

「こ、これは…」

これは?

「長嶋さんと王さんの現役時代のプレミアカードやんか!!こんなのあったなんて…ヒメちゃん良かったなぁ、こんなんめったにあたらへんで!」

無茶苦茶嬉しそうにユウちゃんが叫びます。
もう目にキラキラ光が入ってます…ヤツはマジだ。
うわ〜、うちもこれ欲しいな〜今度二十パックぐらい一気に買い占めようかな〜、でもそれやとお小遣い全部使い切ってまうやんそしたら、サイン入りボール買うつもりだったのかえんくなるよな…とブツブツ。
そんなにキラキラ長嶋さんと王さんが欲しいんだ。
へぇ。

「それ誰ですか?」

さすが嬢野さん、長嶋さんも王さんも知らないんですね!!
……えええーーー!!知らないんだ、この二人まで……この人の生活は一体どうなっているんでしょう。

「ジャイアンツの伝説の人たちだよ。現役時代、このコンビをON砲と呼ぶ呼称もあったぐらいなんだよ。」

ユウちゃんが鼻息荒く、よく分からない用語を交えて語ります。
あの、おーえぬ砲って何ですか?

「じゃいあんつ…伝説の……つまり、この人たちは世の中の女性が熱を上げて追い掛け回すような存在なのですか?」
「そうだよ」

嬢野さんが眉根を寄せながら質問すると、ユウちゃんが即答。
…いや、それは…あんまりいないと思うんですが。
と、私の心の呟きをよそに、嬢野さんが昨日と同じように某お坊さんみたいにぽんと手を叩いて何かをひらめきます。
「ああ、クラスの女子の皆さんが『○×かっこいいー!』とかよく叫んでるアレですね!!皆ブロマイドやライブDVDを持ってるアレですよね!!」
それはジャニ○ズ!!ジャしかあってませんから!!
この人ジャニー○も知らないんだ…この人テレビの存在を知っているんでしょうか?

「そうだよ!!」

コラ!そこ嘘つくな!

「ありがとう、ユウ、私もこれで世間一般の女性の常識を身につけられますわ。」
「うん、ヒメちゃん、このポスターとカレンダーを壁に張って、この人形を机の上に置いてな、そうすれば常識なんかばっちりやで!!」

ちがああああう!!

…私帰りたい。



「三番は私が引きました」

ミカちゃんが二つ折りにしたメモ用紙を開けて、見せます。
そして、すぐに三番と書かれたメモ用紙がつけられた、ノートが幾つか入るぐらいのサイズのピンク一色の紙袋が運ばれてきます。
それを見た途端、ミカちゃんの顔色がさっとメモ用紙みたいな顔色に青ざめます。
一番起こって欲しくない最悪の事態にぶち当たったみたいな。
…なんか誰のか分かるような気がする。このピンク。

で、ミカちゃんが手渡された袋を開けてみましたところ。
…あ、ミカちゃん失神した!あ、意識を取り戻した。

「あの、夢宮さん、これは…?」

そういって、ミカちゃんは袋の中のそれを震える両手で広げて皆に見せました。
胸元に黒いハムスターのブローチがくっついた、ピンクのひらひらの膝上丈の凄いワンピース…分かりやすく言えば○リキュアみたいな?

「えへへー、あのねー、前、夢に出て来たね、屋上から颯爽と飛び降りて、ぺかぺかビームでゴ○ラさんみたいなの倒したりして学園の平和を守るヒロインの衣装が欲しくなってねー、一人でその格好つくるのも淋しいからねー、自分の分とね、もう一着作ったのー可愛いでしょー☆」
「…あー……そうなんですかー……へぇ……あ、ありがとうございます……。」

後光が射してきそうなぐらいに眩しい笑顔のユミちゃんとは対照的に、ミカちゃんは顔の筋肉がフル活用されているぎこちない笑みです。

「そうだミカボン、これ一緒に着て週末どっか出かけよう!可愛いもんこの服装!皆にみせびらかそうよ☆」



その瞬間、ミカちゃんの顔の血管がブチっていった音が私には聞こえました。
顔の筋肉ももはや臨界点を突破したみたいです。
目が笑ってません、顔中怒りマークが浮いて見えます。でも唇は辛うじてまだ笑みの体裁を取り繕っています。
ああ、耐えてる。さすが委員長、こんな人達にも耐久値が高いんだ。
すごいんだね委員長って!

「…そ、その夢宮さん、ごめんなさい、週末は忙しくて…ごめんね?」

震える声で何とかミカちゃんはそれだけの言葉を搾り出します。
すると、今までずっと楽しそうに笑っていたユミちゃんがその言葉に表情を曇らせました。

「ミカボン…そんなにこれ嫌?」
「え?」

今にも泣き出しそうなユミちゃんの声に、ミカちゃんが驚きの声を上げます。
ユミちゃんは続けます。

「そうだよね、こんなの嫌だよね…こんなピンクの嫌だよね。あ、当たり前だよね。どうしてそんなこと気付かなかったんだろう…ごめんね、ミカボン…。」
「え?え?いや、あの、ゆ、夢宮さん…?」

その頬につたうものを、俯いて顔を隠すユミちゃんにミカちゃんが狼狽して慌てふためきます。
ユミちゃんの様子に私も、ユウちゃんも譲野さんも驚きを隠せません。
あのユミちゃんが…あんな表情をするなんて。

「うう、本当にごめんねミカボン、同じ部屋なのに全然ミカボンのこと分かってあげられなくて…」
「そ、そんなことないよ、夢宮さん」

せめてもの慰めの言葉をミカちゃんはユミちゃんにかけましたが、ユミちゃんは黙って首を横に振り、こう言うだけでした…

「ミカボンはブルーが好きなのに…ピンクにしちゃってごめんね…」

――ミカちゃんはその瞬間石になりました。

ユミちゃんってある意味…大物…だよね。

「あ、四番はユミだー☆」

けろっと泣き止んだユミちゃんが元気良くメモ用紙を掲げます。黒ずくめの人が(以下省略)持ってきたのは、ユウちゃんの野球カードのサイズの袋でした。

「これもってきたのはだぁれ?」
「私ですわ。」

譲野さんがユミちゃんに答えます。

「中何が入っているの?」
「開けてみてのお楽しみですわ。」

悪戯っぽく譲野さんが微笑みます。…なんだろう、ユウちゃんの時と同じ空気を感じます。
ユミちゃんが袋から封筒を取り出します。その封筒についていた封蝋(しかも物凄く立派そうな…金箔付ですか!?)をべりっと剥がして、封筒の中から一枚の名刺みたいな一切れの紙を取り出します。
中に何が書いてあるのかとても気になって、ユミちゃんの後ろから紙を覗き込みます。

「電話番号?」

私は思わず声に出してそう言ってしまいます。
紙にはハイフンでつながれた十桁の数字が並ぶだけでした。
譲野さんを除く皆が首を捻ります。
これがプレゼント?

「譲野さん、これどうするの?」

私が譲野さんに訊ねます。
すると、譲野さんは後ろを振り返り、黒ずくめの人達が動き出します。
すぐに黒ずくめの人達が恭しく譲野さんに携帯電話を差し出します。

「電話番号なのですから、電話をかければよろしくてよ。」

そう言って、譲野さんはユミちゃんに携帯電話を手渡します。
が、ユミちゃんは気難しい顔をして私を振り返ります。

「ユミ携帯触った事ないから使い方わかんないよ。リカちゃん知っている?」
「うん、じゃあ私が電話かけるね。」

携帯に紙の番号を打って、すぐにユミちゃんに電話を返します。
トゥルルトゥルル…とコールの音と心臓の音が重なります。
そして、五回目のコールで受話器が持ち上げられる音がしました。

「はい…あ、ご注文の品の配達ですね、すぐにそちらにお持ちします。」

と声がしたあと、こちらが質問する間もなく電話が切れてしまいます。
…ご注文の品?しかも、配達?一体嬢野さんは何を用意したんでしょう?
と、突然、上空からバラバラバラ…って感じの爆音が段々と近づいてきます…ヘリコプター?

「ほら、来ましたわよ。」

そう言って嬢野さんはカーテンを開けて、その光景を私たちに見せ付けます。

――ヘリコプターが校舎と同じ高さぐらいの巨大クリスマスツリーを運ぶ光景を!!

…もしかしなくても、これが…

「あのツリーが私からのプレゼントです。特注で作らせましたのよ。」

にっこり微笑んで嬢野さんが誇らしげに微笑みます。

(・o・)

…はっ、今のは一体…?…とにかく開いた口が塞がりません。
いや、でもですよ、目の前の窓(寮の三階)の目の前に、突如、ホテルとかデパートとかに飾られてそうな巨大クリスマスツリー(しかも本物のモミの木!)がチカチカ光ってて、「わぁ、きれいだな☆」で済ませられますか?
しかもそれをプレゼントします、ですよ?
そんな人いるわけないですってば!!

「わぁ、きれいだな☆」

…いましたよここに、一片の曇りもない笑顔で言う人が!!

「まぁ喜んでいただけてうれしいですわ」
「ありがと〜、これ大事にするね。毎日水やって大事にすれば来年も見られるね☆」
「ええ。また来年一緒に見ましょう」
「うん、約束だよ☆」

(゜o゜)

…はっ、また何か出てきたし……毎日水やりするとかそんな問題じゃすまない気がしますよ…、ユミちゃん…。

ところで…今日と明日過ぎたら、来年の十二月までただの木ですよねコレ…。

「ラストは…私。ミカちゃんのプレゼントだね。」

私の手元には五と書かれたメモ用紙が残っています。
黒づく(以下略)が持ってきたのは、ちょうどA4サイズのラッピングされた書籍の類のものでした。
開けるね?とミカちゃんに断った後、ラッピングを取って、中のものを取り出します。
中から出てきたのは、ごく普通のノートでした。

「その何をプレゼントするか迷って…私たち学生だからノートなら余ることはないかなって思ってノートにしました。ごめんなさい、地味なもので」
「そんなことないよ、私、すごく嬉しいよ!!」

申し訳なさそうに謝るミカちゃんの手を取って私の正直な気持ちを伝えます。
唯一まともなプレゼントに私は心から感動せざるをえないのですから。
…あの三人のどれかに当たっていたりなんかしたら…恐ろしくて寒気が…。

「ありがとう、ミカちゃん、これ大事にするね!!」

ミカちゃんはそこでくすりと笑って、

「これを三谷さんにもらってもらえてよかったです」

そう言いました。

このプレゼント交換の後、クリスマスパーティはお開きとなり、私たちは各々の部屋へと帰りました。
机の上に置いたミカちゃんがくれたノートを見ていたら、日記が書きたいようなそんな気分になりました。
明日からこのノートで書いていこうかな。

何はともあれ、皆様良いクリスマスを!!

ちなみにリカがもらったノートってこんなの

あとがき
バレンタインの話の次にミカ日記が続いて、その次にクリスマスだとおかしい場所が出てくるって!?でもそんなの関係ねぇ!!